シサム工房が、ものごとを判断するときによくめぐらすのが、サステナブルであるかどうかということです。
例えば、このアイデアは、長い目で見て持続可能性のあるものなのか。自分の中で信念をもってYESと思い続けられるものなのかといった具合に。

そうしたサステナビリティの思考法は、代表 水野にとって「ありたい未来と今を、線を引いてめぐらす」ことでもあります。
点ではなく、どれだけその過程がリアルに太い線でつながるかをイメージすること。いつもそんなことをしながらシサム工房のかじ取りをしています。

一般的にサステナビリティを謳うときには、地球温暖化など環境問題にフォーカスしたものが多いように思います。
地球の持続可能性がなくなれば人類だけでなく、地球上の生命体すべてが存在できなくなるわけで最も重要なのは間違いありません。
ですが、このサステナビリティというワード自体に地球の持続可能性という意味が込められているわけではなく、何に対するサステナビリティなのかはその人、そのときによって変えられるニュートラルなもの。

だからこそサステナビリティを意識した思考法というのには汎用性があり、中長期的な視点を持って行動するのにすごく役立つと思っています。
エシカル視点でサステナビリティを思考するときでも、ただ地球環境が持続可能な状態にあればいいわけではないですよね。
やはり大事なのは、どんな地球を、どんな世界をサステナブルな状態と考えるか。

私にとってそれは、人にも地球にも思いやりに満ちた社会でみんなが豊かに暮らせること。

人種も性別も宗教も性的志向も関係なく、互いにリスペクトしあい、思いやりに満ちた社会。誰もが生きていく選択肢を選べる社会。
地球環境を思いやり、自然回復の許容範囲で暮らすライフスタイルを豊かに楽しめる社会。

あまりにも壮大で、理想主義的なのかもしれませんが、事業をする上で、明確なビジョンとして掲げていることです。
地球環境のサステナビリティもそうした社会になることで保てるようになるのではとも思っています。

そこで、今日はこのサステナビリティ思考で生まれた、二つの新しい取り組みをお知らせいたします。

店舗に「エシカルセレクトコーナー」

小さなフェアトレードショップとして始めたシサムのお店は、まだ世の中に十分に知られていなかった「フェアトレード」の仕組みや商品を広く知っていただき、出会っていただく場として運営してきましたが、これからは少しだけ位置づけを変えて、フェアトレードに限らず、エシカル商品のセレクトを強化していくことにしました。
フェアトレード商品は、エシカル商品の中でも「人権」「環境」そして「自立支援」までカバーする特別なものだと思っているのですが、エシカルなライフスタイルのすべてをフェアトレード商品だけで提案できるほどのバリエーションはまだありません。
しかし、本気でエシカルなライフスタイルを広めていかないと地球にとってまずい状況なのは、誰もが感じていることだと思います。
今、ライフスタイルを見直すきっかけと選択肢を増やさないとと思うのです。
特に注目しているのは、社会課題の中でも、プラスチックの問題です。
エシカルを意識するときにすごくわかりやすくて、「自分だけの利便性」を追求したものやサービスにはサステナビリティがないのを、シンプルに伝えてくれます。
軽いし、水も通さないし、腐らない、カビも生えなくて、ものすごく便利! しかし、その背景に、つくるときにも、焼却するときにも、CO2を排出して地球温暖化の原因になっていること。埋め立てても土には還らず、廃棄されたプラスチックは、ごみ問題、マイクロプラスチック問題を引き起こしていることが大問題になっています。
そして、日本人1人当たりのプラスチック容器や包装の廃棄量は、アメリカに次いで世界第2位だというのもきいたことがあります。これではいけないと危機感を募らせています。
そこで、まずはワンウェイ(使い捨て)プラスチックを減らし、プラスチックでなくていいものは積極的にプラスチックフリー製品を選択することをあたりまえにしていきたい!と思い、シサム直営店舗で「エシカルセレクトコーナー」を作る取り組みです。
先行して設置しているのは、すでに3店舗でスタートしています。
特に、ペットボトルの消費を減らすためにも、お気に入りの水筒やタンブラーを見つけてもらいたいと思っています。
デザイン性が高く、わくわくするエシカル商品も増えており、楽しみながらできるアイデアが集まっています。
並ぶのは、すべてが土に還る素材で作られた脱プラスチックライフに役立つアイテムや、量り売り洗剤やオーガニック製品など環境負荷の少ない暮らしに役立つアイテムなど。
これから、取扱い店舗や商品ラインナップを増やしていきますので、ぜひエシカルなライフスタイルをたのしみましょう!

シサムの「ロングライフ・プロジェクト」

ものをつくるところから販売した後のことまで、その全体を「ロングライフ・プロジェクト」と位置付けて、とらえなおすことにしました。
目指すのは、つくったものを「長く生かす」こと。
そしてその過程で、「たくさんの笑顔につなげる」ことです。
フェアトレードだからこそ止めるわけにはいかない「継続的にものをつくる」ことは、多かれ少なかれ環境に負荷をかけることでもあります。
だからこそ、作られたアイテムは短い期間で消費して終わらせるのではなく、長く意味のあるものにしたいのです。
以下では、主要な取扱品である服に特化させた取り組みを3つ紹介します。

1. エシカルな服づくり

土に還る素材にこだわり、作り手のことを知り、作り手が持っている技術や身近な技法を生かしつつ、
フェアトレードの仕組みで自立支援につながる服づくりをしています。
ここ数年、さらに、
◆ 素材のオーガニックコットン化
◆ ボタンなど副資材の脱プラスチック化
◆ 無駄の少ないパターンデザインや
◆ 端切れ生地の有効活用
◆ 補修や調整を想定したデザイン上の工夫
◆ デザインの定番化など
フェアトレードにプラスした取り組みとして、CO2排出を抑えた服づくりにコミットしつつ、愛される服づくりに取り組んでいます。

2. 大切に長く着ていただく

シサム工房での販売は、生産者のこと、手仕事のこと、フェアトレードの仕組みなど、もののうしろにあるストーリーを丁寧にお伝えすることを大切にしています。
それは、この販売方法自体が、愛着をもっていただき、大切にしようという想いを想起させると信じているから。
他にも、
クローゼットに眠っている服を持ってきていただいてのコーディネート提案、「洗濯方法や、素材ごとの取扱上の注意」などを丁寧にお伝えすることも重視しています。
シミや色落ち、着古してくたびれてしまったときには、黒染めサービスもお勧めしています。

(驚くほどかっこよくなるので、ぜひ試してみていただきたいです!)

シサム内に補修部門もいずれ作りたいと考えていますが、現在は、補修していただけるお店のご紹介や繕いワークショップなどに力を入れることを考えています。
フェアトレードは作ったものを購入していただくことで次の注文につながる仕組みです。
だから、長くご愛用いただくよりも、次々と買ってもらわないと困らないの?という声を頂戴することもあります。
しかし、ありがとうございます。大丈夫です!
まずは、私たちの服を心地よく感じてくださる方に、日々を豊かに過ごしていただけるペースで服を取り入れていただくこと。
そして、
まだシサムの服に出会えていない大勢の方たち、とくに環境負荷の高い服を無意識に購入している方たちに、どんどんシサム服にシフトしていただくこと。
それらを実現できるようなコミュニケーションを大切にしたいと考えています。
きっと星の数ほどいらっしゃる、まだシサム服に出会っていない方たち。
周りにそうした方がいらっしゃったらぜひシサム服をご紹介ください!!

3. 服の店頭回収

これまで試験的に服の回収や交換会などを店舗単位で行ないつつ、継続的な形でどうするかを検討してきました。
実は衣料品を回収して海外で必要としている人たちへ送る、ということであれば、すぐにでもできることでした。
ですが、そうした善意の衣料品回収の裏に、現地でごみ山問題を引き起こしたり、現地のアパレル産業育成を阻んでしまうといった問題が隠れていることを、どうしても見過ごせませんでした。
まだ十分に答えが出ているわけではないのですが、自分たちが見える範囲でできることを、まずは始めることにしました。
2023年8月1日から、シサム工房の直営全店舗で服の回収を始めます。
回収した衣類は、大きく次の3つの流れで再び循環させます。
◆1.作家さんによる古着製品づくり(アップサイクル)
◆2.障がい者施設で製品づくり(アップサイクル)
◆3.その他「いらない人からいる人へ」寄付企画 等
3では例えば、衣料品の交換会や譲渡会の開催、スタッフ有志によるイベント出店時に販売、はぎれとして店舗サービスの備品で使用、といったことも想定しています。
目指すのは、つくったものを「長く生かす」こと。
そしてその過程で「たくさんの笑顔につなげる」ことです。
みなさまが大切に着てくださった服の第2の人生としていかがでしょうか?
(※衣類の回収は、シサム工房のオリジナル衣料に限ります)
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シサム工房はまだまだこれからです。
これからも学び、成長し、そしてできることを増やし、深めていきます。
大手企業のようにはできないことも多々ありますが、私たちだからできる、草の根的なことを柔軟に、ひたむきにやっていきます。
これからもどうぞよろしくお願いいたします!