フェアトレードを心に留めていただきありがとうございます。
シサム工房のフェアトレードパートナーたちは、アジア各国にいます。
特にインドは、感染者数が世界2位・900万人と膨大な数になっています。

(写真:ウィキペディアより 2020.11月)

(写真:職を失った出稼ぎ労働者が、一気に田舎に帰ったことで感染を押し広げました。)

3月より、シサム工房の生産者たちは、ロックダウンにより、生産も日々の暮らしも厳しく制限されました。

3月から夏にかけての全パートナーの状況は、こちらにまとめてございます。
長いレポートですが、ぜひご一読ください。




その後、季節は巡り、すっかり秋に。

WITHコロナ時代。

各国のフェアトレード生産者パートナーの様子を、最近の写真を交えてお伝えします。


 

各地、生産がストップし、空港も閉鎖。シサムへの秋冬のお洋服の入荷が遅れに遅れました。
しかし、生産者たちの必死の努力の末、なんとか、入荷をようやく終えようとしているところです。

(写真:待ちに待った入荷便が、オフィスに届いた様子)

本来7月に入荷を予定していた商品が、9月にぼちぼち、10月ぽろぽろ、モノによっては11月なってから届くとは。。
季節感が大切なアパレル業で、重大事件となりました。

(写真:届き次第、シサムスタッフ総出で荷下ろしして、大急ぎの検数検品に誠意取り組む)


 

生産者の住む町や村にも、コロナがじわじわと近づいてきています。
シサム工房の生産者の中にも、本人や家族が罹患した人がちらほら出てきています。
感染した生産者は、適切な治療や隔離を経て、順調に回復していますが、本人と家族、そして職場で動揺が起こりました。

(写真:バングラデシュの生産者DEWが、村を消毒して回る様子)


 

そしてとうとう、生産者自身の訃報も届いてしまいました。ネパールはSana Hastakala の金物職人さんで、何十年も家族同然でSanaと一緒に歩んできた方でした。私たちも親しみを持ってお付合いしていた方のまさかの訃報は、ショックで、言い現わせないほど落ち込んでいます。心からのお悔やみを申し上げたいと思います。

(写真:シサム用に、クリスマスに人気のオーナメント・星形のフリグリーを作っている故BABU KAJIさん)


● サナハスタカラ@ Nepal

丁寧な手編みのニット製品が人気のサナハスタカラ。感染対策をしながらのニット検品の様子です。町は閑古鳥が鳴き、工房の1階にあるお店も、開けたり閉めたりの繰り返しです。最近、オフィスの主要スタッフも、何名も感染してしまいましたが、順調に回復し職場に徐々に復帰しています。

 


● マハグチ @ Nepal

(写真:お洋服のアイロンと最終仕上げチーム。マスクとフェイスシールドを装着して。)

素朴なコットンのお洋服を作っているネパールのマハグチ。密を避けるため、家でできる仕事は在宅で。限られた人数で出勤し、できる仕事はなんでもカバーしあっています。オフィスの家賃を節約するため、街中のオフィス機能を郊外の縫製工房に段階的に引っ越し中です。家でできる仕事を増やすため、寄付付きマスクを、さらに1000枚追加発注しました。在宅の生産者のほか、工房に出勤してくる耳の不自由な女性たちが専門で担当して縫ってくれています。

代表スニルさんからの、波乱万丈、コロナ禍中の現場から届いたお手紙「スニルさんからの手紙」も合わせてご覧ください。


● クリエイティブ ハンディクラフト @ India


インドの港町にある巨大スラムで縫製製品を作り続けているクリエイティブハンディクラフト。4か月の生産停止中も、内部留保を切り崩したり、シサムやほかのバイヤーからの寄付を使って、生産者やスタッフに給料を支払い続けました。このところ政府による出勤人数制限が緩んできて、スラムに住む女性メンバーがミシンに向かい始めています。素材の手配も、輸出の手配も、今までになかった新しい制約がたくさんあり、一連の業務すべてが大変な苦労の上でなんとか進められています。


● カラティマク @ India 

(写真:インドの女性はショールを上手に顔に巻いてマスク代わりにする人が多いです)

美しい手刺繍が得意なカラティマク。来年の春夏の刺繍のお洋服の生産が、新しい生活様式の中で進んでいます。フェアトレードマスクも、あと2700枚作ってくれています。先に届いた2300枚も順調に日本で売れています。チカン刺繍をワンポイントで入れることで、女性の臨時収入になっています。お祭りやお祝い事がほとんど開かれない中、ギフトに人気だったチカン刺繍製品が、今インド国内で全く売れていません。25万人従事していると言われるチカン刺繍の伝統産業全体が危機に瀕してます。そんな中、シサムの寄付付きフェアトレードマスクが、緊急スポット注文となって、小さいながらカラティマクに集まる女性たちの生計を支えています。1枚のマスクにつき、150円を生産者に寄付します。刺繍のお洋服も発注量を減らすことなくオーダーを掛け、目下生産の真っ最中です。無事、日本に届きますように!


● サシャ @ India 

美しいショールや雑貨を届けてくれているサシャ。サシャのCEOであり、WFTO=国際フェアトレード連盟の会長でもある知性と美の権化、Roopaさん。「よりフェアな世の中に立て直そう!」Build Back Fairer と世界に呼びかけています。

多くの女性生産者を抱えるサシャ。コロナは女性への影響が特に色濃かったと分析しています。行き詰った経済、ステイホームで急増した家の仕事、さらに職を失って出稼ぎから帰ってきた男性たちの急増が、DVの増加につながっており、ストレスはピークを迎えていると言います。シングルマザーや障害を抱える生産者に向け、食料や衛生用品の配布しました。

サシャでは、2名の感染者が出ましたが、現在復帰しています。地域の感染はある程度コントロールされてはいますが、生産者の仕事量も受注も減っている状況です。

(写真:大型台風「アンファン」の翌日のようす)

追い打ちをかけるように襲来した5月の台風の後、被災した8つの工房の修繕や、生産者70名に生活物資の提供を行いました。

(写真:コロナ前と後の生活をレポートさせていただいたSashaのお二人。
このお二人にスポットを当てた記事も、ぜひご一読ください。)

 


● MESH @ India 

(写真:ハンセン病患者とその家族が暮らすLittle Flowerという施設にて。)

美しいシルクショールを手織りしているハンセン病患者やその家族のサポートグループMESH。ステイホームが長引き、コロナ患者も複数出て、さらに、大雨でひどい洪水が起きるという苦しい状況です。洪水で自給用の畑は浸水し、敷地に閉じ込められた生産者たちは、織物工房内に残っていた糸を全て布に織り上げて、当てもないまま糸を使ってしまいました。手を動かしていないといられなかったと言います。今後在庫が一枚でも売れていくことが願いです。シサムにも、もうすぐ新商品が到着します。(コロナで空の便も混乱していて、手違いでひと箱アメリカに誤配され、ただ今取り返す手続きの真っ最中です。)

MESHのショールと、現地の紹介をしたコラムをUPしました。ぜひ、そちらもご覧ください。


● ノアズアーク @ India 

(写真:入口での検温の様子)

鉄や木の雑貨を作っているノアズアーク。以前から海外からの注文が減っていたところへのコロナ禍で、経営的に厳しい状態です。ノアズアークのある北インドモラダバードでは、3か月の完全ロックダウンの後は、30%の人数でしか工場を開く許可が下りず、9月からようやく感染対策が採れている工場から徐々に100%出勤が許可されていっています。みなが工場に出て来れるよう、様々な感染対策を採りながら仕事を再開しています。

(写真:すみずみまで消毒も念入りに。工場の入口。)

感染対策の一例は、①赤外線での検温は日に2度行い、記録をつける。②接触追跡ができるように行動記録を維持。③敷地に入ってくる入荷品は全て毎日消毒。④マスク、手袋、フェイスシールドといった個人用防具用品(PPE)を提供。

(写真:工場に入荷するものの消毒を徹底)

(写真:木工製品の作業風景。フェイスシールドとマスク、手袋を付けて。)

代表のサミュエルさんからシサム工房に届いた手紙をご紹介します。

「ノアズアークでは、ロックダウン中に誰一人解雇することはなく、給料も満額で支払い続けました。また、他で解雇された何人かの職人を新たに雇い入れられたことを誇りに思います。
ノアズアークの使命は「低所得の職人が貧困のサイクルを断ち切る力を与えること」。これからも”People First”=”何を置いても人を第一に大切に”、とぶれずに行動していきます。
この苦境の中でも、注文を掛け続けることでサポートしてくださるみなさんに心から感謝します。」

ノアズアークの商品は、こちらからご覧ください。


● DEW @ Bangladesh 

かご雑貨を作ってくれているDEWのあるバングラデシュでもロックダウンが長引き、ローカルマーケットでの販売も、輸出も低迷しています。販売を途切らせないため、ネット販売を始めようと、目下作業を進めています。

シサム工房からの緊急寄付10万円と他からの寄付を使って、以下のことができたと報告がきました。

①オーガニックコットンのマスクを生産者に配布。②感染したオフィススタッフの救援 ③簡易手洗いタンクと石けんの配布 ④村や家の消毒 ⑤手洗いの講習 ⑥オフィス家賃の1か月分の支払い ⑦検品担当スタッフの2か月分の給与の支払い ⑧オンラインストアの開設準備

(写真:ムスリム国バングラデシュでは、女性への講習は女性が行わないと、村の中で摩擦が起こりますので、その辺りも地元NGOならではのさすがの気配り)

DEWの商品は、こちらからご覧ください。


● コーディリエラグリーンネットワーク CGN @ the Philippines 

(写真:ロックダウンを掻いくぐってコーヒーの乾燥を敢行!)

SISAM COFFEEを届けてくれているCGNでも、3月17日からのロックダウンで大変不自由な生活に突然入りました。多少の公的支援が住民にあった最初の2か月が過ぎ、あとは自力で生き延びるしかなくなったフィリピンの人たちは、今日も生き残りをかけて必死です。普段なら、この時期、トラックで村々を巡り、コーヒー豆を農家から買い取って、最終乾燥をさせ、豆の選別をして、コンテナに詰めてシサムに出荷という作業を大急ぎでしているはずの時期。山の中の生産者たちも、町で閉じ込められたスタッフたちも、工夫と苦労を重ねて、最良の状態で豆を届けるべく奮闘してくれました。

(写真:フィジカルディスタンスを守りながら営業を続ける市場。FB「Baguio City Yesterday and Today」より)

CGN創設者の反町さんが、とても詳しいコラムを、6つのストーリーに分けて書いてくださいました。

本当に深くて、それでいてちょっとくすっと笑ってしまうような筆致のコラムです。ぜひ、一話ずつ、お楽しみいただければと思います。

SISAM COFFEEの森から 1:「コーヒーの花」
SISAM COFFEEの森から 2:「森と村の本当の豊かさ」
SISAM COFFEEの森から 3:「コーヒー豆選別のリモートワーク」
SISAM COFFEEの森から 4:「最初にコーヒーを植えたのは15年前」
SISAM COFFEEの森から 5:「ローカルコーヒー・オンラインショップ狂騒曲!」
SISAM COFFEEの森から 6:「ロックダウンから5か月。コーヒー農家さんたちの声」

今年も、たくさんの台風が現地を襲い、コンテナ船の出荷も大変でした。すったもんだありましたが、ひとまず日本に向けて、今期の豆がとうとう出航しました!
その辺りも続編のコラムで書いてくださいます。どうぞ、お楽しみにしてください。

SISAM COFFEEのお歳暮や通販はこちらから。


● CCAP @ the Philippines 

ランプや手編みのつづらなどを届けてくれている、20年来のシサムのパートナーCCAP。国内に点在する24の生産者グループをコロナ禍の中、必死で支え続けています。移動ができず、素材も手に入りにくい中、現地デザイナーと村々の生産者たちとが工夫して、新しい商品もひねり出し、秋冬の新商品カタログを先日リリースするなど、前に進んでいます。シサム工房を含め、各国のパートナーからの寄付を使って、医薬品の他、食料の足しになるようにと、野菜の種やひよこを配布するなど、生産者たちの生活再建のための活動も地道に行っています。

(写真:新しいカタログをなんとか完成させました。)

CCAPの商品コレクションはこちらから。


● ミトラバリ @  Indonesia

(写真: バリにあるショップの様子)

世界中の人に人気だった観光地バリで活躍していたミトラバリですが、パンデミック以後、ぱったりと観光客が島からいなくなってしまいました。もともと、お土産産業からひどい扱いをされていた職人たちの保護育成がメインの活動だったミトラバリでは、観光業が崩壊した今、その生産者たちは未曾有の不景気に見舞われています。

海外への輸出や、外からの観光客への販売が頼りだったミトラバリでは、ガレージセールと称して、地元インドネシアの人に向けてスタイリッシュな焼きもののお皿など、大量の在庫を販売してみたところ、思いのほか好評で、今、国内市場に活路を模索している最中です。国内人口が3億人いるではないか!と、今回改めて見直し、首都圏で販売してみたりと新しい可能性にチャレンジしています。

シサム工房には、リサイクルガラスやシルバーを使った美しいアクセサリーを届けてくれています。細かい職人技のアイテムを、ぜひご覧ください。


以上、シサム工房の海外フェアトレードパートナーのその後をご報告いたしました。

シサム工房でも、現地の訪問が全くできなくなり、モノづくりが難しくなってしまいました。
入荷の大幅な遅れによる、販売機会の喪失にも大きなダメージを受けています。

それでも、知恵を絞って前に進もうとし、一番脆弱な生産者を一番に思って活動している現地のパートナーたちのストーリーは、武勇伝そのもので、聞けば聞くほどこちらも頑張らねば!とエネルギーをもらっています。

また、各パートナーの逼迫した事態を受け、シサム工房より「コロナ緊急寄付」を各団体に送金しました。
別途、詳しい内訳やその使い道をお知らせいたします。

皆さまも、日々、不安や不便を感じながらも、新しい工夫ややり方で、日々を乗り切ったり、新しい楽しみを見つけたりもしておられることと思います。
いつもシサム工房やつながるフェアトレード生産者たちを支えてくださり本当にありがとうございます。

フェアトレードが元気であることが、社会をもっと思いやりに満ちたものにすることを信じて、事業を継続することに集中していきたいと思います。

ぜひ、引き続き温かいご愛顧を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

シサム工房
代表
水野泰平

副代表
人見とも子